フリーランスの税金と社会保険料はどれくらい高いのか?
フリーランスは会社員と比較すると、 税金と社会保険料が高くなります。具体的な例にあげると、 年収1,000万円の場合、 会社員よりも、およそ71万円高くなります(月々の手取りが約6万円少なくなります)。
これは、フリーランスが会社員と比較して、 領収書不要の経費として認められる金額(所得控除)が著しく低く抑えられていることや、 個人事業税という個人事業主に課せられる税金の税率が高いこと、 また社会保険料が全額自己負担であること、などが原因です。
ここでは、フリーランスの税金が会社員と比較してどの程度高いのか、 また、これら税金を安くする方法について、紹介しています。
目次
フリーランスの税金と会社員の税金の比較(年収別)
フリーランスの税金+社会保険料は、会社員の税金+社会保険料と比較すると、 年収300万円で21万円、年収500万円で39万円、年収1,000万円では71万円高くなります。以下、フリーランスの年収300万円~年収1,000万円までの税金+社会保険料を会社員と比較しています。
税金・社会保険料の計算に利用した数字は、 ページ最下部の備考をご参照下さい。
年収300万円の場合
フリーランス | 会社員 | 差 | |
健康保険料(※1) | 378,114 | 133,500 | 244,614 高い |
介護保険料(※2) | 0 | 0 | 0 |
年金(※3) | 195,120 | 272,724 | 77,604 安い |
所得税(※4) | 69,800 | 56,000 | 13,800 高い |
住民税(※5) | 147,300 | 121,200 | 26,100 高い |
個人事業税(※6) | 5,000 | 0 | 5,000 高い |
手取り額 | 2,204,666 | 2,416,576 | 211,910 安い |
年収400万円の場合
フリーランス | 会社員 | 差 | |
健康保険料(※1) | 497,314 | 177,996 | 319,318 高い |
介護保険料(※2) | 0 | 0 | 0 |
年金(※3) | 195,120 | 363,636 | 168,516 安い |
所得税(※4) | 130,200 | 86,900 | 43,300 高い |
住民税(※5) | 235,400 | 181,700 | 53,700 高い |
個人事業税(※6) | 55,000 | 0 | 55,000 高い |
手取り額 | 2,886,966 | 3,189,768 | 302,802 安い |
年収500万円の場合
フリーランス | 会社員 | 差 | |
健康保険料(※1) | 616,514 | 222,492 | 394,022 高い |
介護保険料(※2) | 0 | 0 | 0 |
年金(※3) | 195,120 | 454,548 | 259,428 安い |
所得税(※4) | 218,300 | 142,700 | 75,600 高い |
住民税(※5) | 323,500 | 248,100 | 75,400 高い |
個人事業税(※6) | 105,000 | 0 | 105,000 高い |
手取り額 | 3,541,566 | 3,932,160 | 390,594 安い |
年収600万円の場合
フリーランス | 会社員 | 差 | |
健康保険料(※1) | 720,381 | 267,000 | 453,381 高い |
介護保険料(※2) | 0 | 0 | 0 |
年金(※3) | 195,120 | 545,460 | 350,340 安い |
所得税(※4) | 383,300 | 209,200 | 174,100 高い |
住民税(※5) | 413,100 | 314,600 | 98,500 高い |
個人事業税(※6) | 155,000 | 0 | 155,000 高い |
手取り額 | 4,133,099 | 4,663,740 | 530,641 安い |
年収700万円の場合
フリーランス | 会社員 | 差 | |
健康保険料(※1) | 730,000 | 311,496 | 418,504 高い |
介護保険料(※2) | 0 | 0 | 0 |
年金(※3) | 195,120 | 636,360 | 441,240 安い |
所得税(※4) | 581,300 | 326,900 | 254,400 高い |
住民税(※5) | 512,100 | 385,100 | 127,000 高い |
個人事業税(※6) | 205,000 | 0 | 205,000 高い |
手取り額 | 4,776,480 | 5,340,144 | 563,664 安い |
年収800万円の場合
フリーランス | 会社員 | 差 | |
健康保険料(※1) | 730,000 | 355,992 | 374,008 高い |
介護保険料(※2) | 0 | 0 | 0 |
年金(※3) | 195,120 | 676,368 | 481,248 安い |
所得税(※4) | 781,300 | 489,900 | 291,400 高い |
住民税(※5) | 612,100 | 466,600 | 145,500 高い |
個人事業税(※6) | 255,000 | 0 | 255,000 高い |
手取り額 | 5,426,480 | 6,011,140 | 584,660 安い |
年収1,000万円の場合
フリーランス | 会社員 | 差 | |
健康保険料(※1) | 730,000 | 444,996 | 285,004 高い |
介護保険料(※2) | 0 | 0 | 0 |
年金(※3) | 195,120 | 676,368 | 481,248 安い |
所得税(※4) | 1,214,120 | 832,100 | 382,020 高い |
住民税(※5) | 812,100 | 637,700 | 174,400 高い |
個人事業税(※6) | 355,000 | 0 | 355,000 高い |
手取り額 | 6,693,660 | 7,408,836 | 715,176 安い |
また、毎月・毎年の手取り額には現れないものの、 会社員が将来もらえる退職金や年金(報酬比例部分)を、 フリーランスは自前で用意しなければならないことを考えると、 フリーランスの手取り額は、さらに低くなり、 年収1,000万を例にあげると、およそ200万円も手取り額が少なくなります。
詳しくは、自営業(個人事業主)の年収1,000万円と会社員の年収1,000万の違い、 SE・IT業 フリーランスと会社勤め 年収比較をご参照ください。
フリーランスの税金はなぜ高いのか?
フリーランスの税金、社会保険料が、 会社員と比較して高い理由は、以下の通りです。
年収1,000万円の場合
■社会保険料(健康保険、介護保険、年金)
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フリーランスの税金を安くする方法
フリーランスが税金・社会保険料を安くするには、以下の様な方法があります。
フリーランスの税金を安くする方法
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これまで見落としがちであった支出を事業経費として計上する
事業経費として認められるか、認められないかはグレーな部分が多く、 同じ支出であっても、税理士によって見解が異なることは珍しいことではありません。そのようなグレーな部分を白にする唯一の方法は、「知識」と「理論武装」です。
経費として計上できることを知らないことは、 そのまま無駄な税金を支払っていることを意味し、 1,000円の買い物でさえ、それが経費として認められれば、 150円~550円得をし、知らなければ150円~550円損をしてしまいます(※住民税+所得税を15%~55%で簡易計算した場合)。
また、経費を計上した理由が、明白、かつ、理論的であれば、 これまで生活費として利用していたものでさえ、 経費に計上できる可能性がでてきます。
これら領収書を経費にする方法については、 個人事業主、フリーランス用の多くの節税対策本が販売されています。
所得控除を利用した節税対策を行う
ここでの所得控除とは、フリーランスの人の場合、 確定申告B用紙の欄「所得から差し引かれる金額」のことです。この欄には、「(本人)基礎控除」や「扶養控除」をはじめ、 「社会保険料控除」、「小規模企業共済等掛金控除」、「生命保険料控除」などいくつかの項目があります。
この欄に記入可能な内容と金額は、全額所得控除の対象となるため、 税金(社会保険料は無関係)の計算の元となる金額(課税対象額)そのものが低くなり、 結果として税金(所得税と住民税)が安くなります。
所得控除を利用した節税対策には、 以下の様な方法があります。(※青色申告特別控除は確定申告Bの「所得から差し引かれる金額」ではありませんが、 所得から差し引かれる金額であるため、掲載しています。)
フリーランスの税金を安くする方法
■年金
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この所得控除による節税対策の一例をあげると、 フリーランスで年収1,000万円の人が40年間、 小規模企業共済に加入した場合、 生涯年収は1,400万円も増えます。
その他、所得控除を利用した節税対策の中身とどの程度節税が可能かについては、 自営業(個人事業主)の節税対策をご参照下さい。
また、寄付金控除(ふるさと納税)は節税とは少し異なるものの、 同じ年収の場合、フリーランスの住民税は会社員より高くなるため、 ふるさと納税も、会社員よりより多くの限度額を利用できます。
詳しくは、 個人事業主・自営業のふるさと納税 限度額をご参照下さい。
同じ仕事内容で、年収が100万円~200万円下がる程度なら、生涯年収が上がる可能性が高いため、転職する
フリーランスと会社員の年収に対する手取り額では、上記のとおり、 年収1,000万円でも71万円しか変わりません。しかし、将来受け取る年金(国民年金と厚生年金)の違い、 退職金の有無、高額な健康保険料を考慮した場合、 フリーランスの手取り年収は会社員よりも100万円以上少なくなることがほとんどです。
例えば、 年収600万円のフリーランスの手取り額を、生涯年収という見方で見ると、 年収434万円の会社員よりも少なくなってしまいます。
そのため、もし仕事の内容が同じで、 正社員に転職が可能であれば、 会社員に転職した方が、将来の収入は増える可能性が高くなります。
具体的にどの程度差があるのかについては、 フリーランスが転職すべき年齢をご参照下さい。
法人化し、税金を安くする
個人事業主が法人化するメリットはいくつかあるものの、 同じ年収の場合、上記のような「給与所得控除」(最大220万円)の恩恵を受けることができることです。その結果、同じ年収にも関わらず、 法人化して自分自身に給与を払うことで、 所得控除の差(給与所得控除最大220万円と青色申告65万円)の分だけ、税金が安くなります。
その他、法人化により、 厚生年金に加入できるようになるため、 配偶者の国民年金代金が不要になるほか、 経費として認められる領収書の種類、金額が増えるなど、 年収、家族、事業内容によっては、 法人にした方が、より多くの恩恵を受けることができます。
※備考:
※1:会社員の健康保険料:
- 健康保険料はIT業の人が多く加入する「TJK(東京都情報サービス産業健康保険組合)」(平成28年)の値を参考にしています。
- 健康保険料の計算の元となる標準報酬月額は、年収÷12ヶ月で計算しています。
- 健康保険料の本人負担額は4.45%で計算しています。
- 介護保険料は0円で計算しています。
- 厚生年金保険料の計算の元となる標準報酬月額は、年収÷12ヶ月で計算しています。
- 厚生年金保険料の本人負担額は9.091%で計算しています。
- ただし、年収800万円以上は、標準報酬月額の最大等級(31等級)となることから、676,368円(56,364円×12か月)としています。
- 所得税には、復興所得税は含まれていません。
- 所得控除に利用した数字について、前年の社会保険料は同額、人的控除は本人基礎控除のみ(38万円)で計算しています。
- 所得控除に利用した数字は、前年の社会保険料は同額、人的控除は本人基礎控除のみ(33万円)で計算しています。
- 住民税の税率は10%(市民税:6%、県民税:4%)で計算しています。
- 住民税の均等割り額は5,500円(市民税:3,500円、県民税:2,000円)で計算しています。
- 住民税の計算に用いられる所得税との調整差額を1,500円としています。
- 健康保険料は、全国の自治体のうち、比較的中位に属する平成28年分の京都市の健康保険料で計算しています。
- 介護保険料は0円で計算しています。
- フリーランスの年金(国民年金)は、平成28年分の1か月あたり国民年金保険料(16,260円×12ヶ月)で計算しています。
- 所得税には、復興所得税は含まれていません。
- 前年支払った社会保険料は今年度と同額、人的控除は本人基礎控除のみ(38万円)で計算しています。
- 青色申告特別控除(65万円)とし、個人事業主 税金/社会保険料計算シュミレーションから算出しています。
- 前年支払った社会保険料は今年度と同額、人的控除は本人基礎控除のみ(33万円)で計算しています。
- 住民税の税率は10%(市民税:6%、県民税:4%)で計算しています。
- 住民税の均等割り額は5,500円(市民税:3,500円、県民税:2,000円)で計算しています。
- 住民税の計算に用いられる所得税との調整差額を1,500円としています。
- 個人事業税の税率は5%(ほとんどの業種に当てはまる)で計算しています。
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