SE・IT業 フリーランスと会社勤め どちらが得か?
SE、プログラマー、ITインフラなど、 IT業に携わる人の多くは、 その専門性の高さから、 案件単価(月額)が非常に高く、 仕事もすぐに紹介してもらえるため、 フリーランスで働く人が多くなっています。また、税金や社会保険料が毎月控除されず、 3月の確定申告後に徴収されるため、 非常に多くの収入があると錯覚してしまう場合があります。
しかし、フリーランスとして働く場合、 年金・退職金を自前で用意する必要があるため、 平均月額単価が66万円以下だと、 会社員よりも生涯年収が低くなってしまいます。
ここでは、SE、プログラマー、ITインフラなど、 IT業に携わる人が、 フリーランスになった方が良いのか、 会社勤めの方が良いのかについて、 年収、生涯の収入を基準に、どちらが得か比較しています。
※各項目の計算に利用した数字は、備考をご参照下さい。
IT・SE業、会社員とフリーランスの損益分岐点は、「月収:66万円」
IT・SE業として働く場合、 フリーランスとして働くのが良いのか、 会社員として働くのが良いのか、 収入だけで比較した場合、 その損益分岐点は、月収(月額単価):66万円、年収:795万8,000円です。平均月収(月額単価):66万円、平均年収:795万8,000円以上の場合、 フリーランスとして働く方が、生涯年収が高くなります。
反対に、 平均月収(月額単価):66万円、平均年収:795万8,000円未満の場合、 会社員として働く方が、生涯年収が高くなります。
以下、IT・SE業の会社員として、 40年間(20歳~60歳)働いた場合と、 フリーランスとして40年間(20歳~60歳)働いた場合の生涯年収を比較しています。
IT・SE 「会社員」の年収
国税庁が発表している「民間給与実態統計調査結果」(平成27年度)によると、 IT・SEなどの情報通信業の平均年収は、575万円(平均年齢:41歳)、 中央値は500万円~600万円(※1)になっています。この41歳平均年収575万円は、 見方を変えると、 入社直後の年収は320万円程度(20万円×12ヶ月+賞与4ヶ月)で、 毎年127,500円昇給し、 41歳で平均年収の575万円、 60歳で817万円程度もらえる会社員像を示しています。
会社員 年収575万円と手取り額
年収 | 5,750,000 |
健康保険料(※2) | 250,980 |
介護保険料(※3) | 18,894 |
年金(※4) | 512,724 |
所得税(※5) | 192,200 |
住民税(※6) | 297,600 |
手取り額 | 4,477,602 |
IT・SE 「会社員」の生涯 手取り年収
20歳~60歳の40年間、 SE、あるいはIT業の会社員として働いた場合、 40年間の手取り収入はおよそ1億7,910万円(手取り年収4,477,602円×40年)になります。また、給与・賞与以外に、会社員はフリーランスにはない退職金とフリーランスより多い年金をもらえます。
会社員の場合、 退職時におよそ1,916万円(平均給与47万9,166円×40ヶ月)の退職金(※7)をもらえます。
また、この年収で40年間 厚生年金保険料を収めた場合、 65歳~83歳(日本人の平均寿命)の18年間で、 もらえる年金の総額はおよそ2,751万円(1,528,700円/年×18年)になります。
これら3つを合算すると、 会社員がもらえる生涯の手取り年収は、 およそ2億2,577万円となります。
会社員がもらえる手取り収入(年収575万円の場合)
手取り給与 | 1億7,910万円 |
退職金 | 1,916万円 |
年金 | 2,751万円 |
------------------------- | |
合計 | 2億2,577万円 |
IT・SEフリーランスの年収
上記、IT・SE業に携わる会社員の生涯年収「2億2,577万円」をフリーランスが手にするには、 以下の様なハンデを自前で克服した年収を稼ぐ必要があります。
IT・SE業 フリーランスが負うハンデ
■勤労期間(20歳~60歳)
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これらフリーランスに課せられるハンデを考慮すると、 平均的な会社員の年収575万円の手取り額447万円(上記参照)にするには、 年収795万円(月収:66万3166円)を稼いで、 はじめて平均的な会社員と同じ年収になります。
また、年収795万円(月収:66万3166円)を稼ぎ続けないと、 平均的な会社員より、生涯年収は下回ってしまいます。
フリーランスの年収795万円の見かけの手取り(左)と本当の手取り(右)
年収 | 7,958,000 | |
健康保険料(※8) | 730,000 | |
介護保険料(※9) | 80,000 | |
国民年金(※10) | 195,120 | |
所得税(※11) | 796,100 | |
住民税(※12) | 619,500 | |
個人事業税(※13) | 252,900 | |
自前で用意すべき年金 | 0 | 327,750 |
自前で用意すべき退職金 | 0 | 479,000 |
手取り額 | 5,284,380 | 4,477,630 |
以下、会社員がもらえる生涯の手取り年収は、およそ2億2,577万円を稼ぐために必要な毎年の年収です。
フリーランスがもらえる年金(国民年金)は、 40年間満額収めた場合でも、 65歳~83歳(日本人の平均寿命)の18年間で総額1,440万円(80万円/年×18年)にしかならず、 会社員がもらえる年金総額2,751万円(1,528,700円/年×18年、上記参照)と比較すると、 もらえる年金の総額は、1,311万円少なくります。
この会社員よりも少ない年金分(1,311万円)を、 勤労期間の40年(20歳~60歳)で自前で用意する必要があるため、 年金差額として、毎年32万7,750円(1,311万円÷40年)を、 貯蓄などで用意する必要があります。
また、フリーランスは、 会社員がもらえる退職金1,916万円も自前で用意する必要があります。
この退職金(1,916万円)を 勤労期間の40年(20歳~60歳)で自前で用意する必要があるため、 退職金として毎年47万9,000円(1,916万円÷40年)を、 貯蓄などに回す必要があります。
そのため、 フリーランスの場合、 年収795万円稼いではじめて、 会社員の平均年収575万円と同じ手取り額447万円を手にすることができます。
これは言い換えると、 フリーランスで働く場合、 年収795万円(月収66万円)以上稼がないと、 平均的な会社員よりも、生涯年収は低くなってしまいます。
また、会社員の様に、年齢に比例して案件単価が高くなるわけではないため、 年齢が若い時ほど、稼げる時ほど、 より多く貯蓄に回す必要があります。
フリーランスの生涯年収を最大化させる案件単価と転職時期については、 フリーランスが転職すべき年齢をご参照ください。
IT・SE フリーランスは節税が必要
上記計算は、節税対策を全くしていない(青色申告特別控除のみ考慮した)場合です。しかし、フリーランスや個人事業主は、 幾つかの節税対策をすることで、 生涯年収を上げる方法があります。
フリーランスの年金対策、節税対策については、 自営業(個人事業主)の節税対策をご参照下さい。
※備考:
※1:国税庁が発表している「民間給与実態統計調査結果」では、 年収が100万円単位のため、中央値(50%)が属する年収500万円以上、600万円未満を中央値としています。
※2~4共通(会社員):
- 健康保険料、介護保険料、厚生年金の計算の元となる標準報酬月額は、47万9,166円(年収575万円÷12ヶ月)としています。
- 健康保険料、介護保険料は、IT業の人が多く加入する「TJK(東京都情報サービス産業健康保険組合)」(平成28年)の値を参考にしています。
- 介護保険料は、標準報酬月額47万9166円、41歳の場合、3,149円ですが、 20歳~40歳未満は未徴収、40歳~65歳までは徴収であることから、 20歳~60歳の生涯年収を求めるため、その半額である1,574.5円を介護保険料月額とし、 年額18,894円(1,574.5円×12ヶ月)としています。
- 所得税には、復興所得税は含まれていません。
- 所得控除に利用した数字について、前年の社会保険料は同額、人的控除は本人基礎控除のみ(38万円)で計算しています。
- 所得控除に利用した数字は、前年の社会保険料は同額、人的控除は本人基礎控除のみ(33万円)で計算しています。
- 住民税の税率は10%(市民税:6%、県民税:4%)で計算しています。
- 住民税の均等割り額は5,500円(市民税:3,500円、県民税:2,000円)で計算しています。
- 住民税の計算に用いられる所得税との調整差額を1,500円としています。
※8:フリーランスの健康保険料について
- 健康保険料は、平成28年分の全ての自治体の保険料の上限額(73万円)で計算しています。(年収795万円の場合、ほとんど全ての自治体で当てはまるため)。
- 介護保険料は平成28年分の全ての自治体の保険料の上限額(16万円)ですが、 20歳~40歳未満は未徴収、40歳~65歳までは徴収であることから、 20歳~60歳の生涯年収を求めるため、 その半額である年額8万円を介護保険料としています。
- 自営業の年金(国民年金)は、平成28年分の1か月あたり国民年金保険料(16,260円×12ヶ月)としています。
- 所得税には、復興所得税は含まれていません。
- 前年支払った社会保険料は今年度と同額、人的控除は本人基礎控除のみ(38万円)で計算しています。
- 青色申告特別控除(65万円)とし、個人事業主 税金/社会保険料計算シュミレーションから算出しています。
- 前年支払った社会保険料は今年度と同額、人的控除は本人基礎控除のみ(33万円)で計算しています。
- 住民税の税率は10%(市民税:6%、県民税:4%)で計算しています。
- 住民税の均等割り額は5,500円(市民税:3,500円、県民税:2,000円)で計算しています。
- 住民税の計算に用いられる所得税との調整差額を1,500円としています。
- 個人事業税の税率は5%(IT業に当てはまる)で計算しています。
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