NHKは高い?世界の公共放送と比べてみた


NHKの受信料に関して、 日本国民の多くが 「高い」、「NHKは見てないので払いたくない」、 「徴収員がしつこい」、「スクランブル放送にして欲しい」など、 書ききれないほど様々な不満を訴えています。

しかし、 この「公共放送」に関わる問題は日本だけの問題でしょうか?

このような不平不満は世界では起こっていないのでしょうか?

このような疑問から、 世界20カ国の公共放送(国営放送を含む)を比較した結果、 様々な問題がみえてきました。

■目次

国別受信料一覧(20カ国)

世界20カ国(ヨーロッパ8カ国+α、アジア・オセアニア7カ国、北米・南米3カ国、アフリカ2カ国)について、 公共放送(国営含む)の料金、受信料徴収対象者、その他特徴をまとめています。

各国の情報に関わる詳細は備考・参照をご参照下さい。

ヨーロッパ

ヨーロッパはほとんどの国が、視聴の有無に関わらず料金を徴収します(NHKと同じ)。 しかし、受信料徴収対象者には、以下の2パターンが存在します。
その他に、各戸からは受信料を徴収せず、 政府による補助金で運営される国も少なくありません。

国名 年間料金(円) 備考・特徴・参照
デンマーク 43,464円 TVやラジオなどサービスを受信できる機器を持っている人が徴収対象。調査した20カ国中最も高い。(※1)
フランス 17,792円 TVやラジオなどサービスを受信できる機器を持っている人が徴収対象。
地方税として徴収される。
不足分は広告収入で補填。(※2)
ドイツ 26,880円 TVやラジオなどサービスを受信できる機器を持っている人が徴収対象。
家庭以外に、企業や機関も徴収対象。(※3)
ギリシャ 4,608円 電気代として徴収。
(電気契約ごとに支払いが発生するため、複数の家持ちは家ごとに、また、企業も対象。)
政府から少し助成金あり(※4)
イタリア 11,520円 2016年より、電気代として徴収する法案が可決され、テレビ保持・利用とは無関係に支払う。
収入の約1/2~1/4は広告収入。(※5)
イギリス 21,823円 テレビ視聴は政府免許が必要で免許に料金が発生。
テレビ以外にインターネットストリーミング(BBC iPlayer) も徴収対象。(※6)
スペイン 0円 政府による補助金で運営。(※7)
ロシア 0円 ロシアのメディアは完全に国有または非公開にされています。政府による補助金で運営。(※8)
その他 チェコ共和国は約8,019円/年、
フィンランドは税金(YleTax)として、収入応じて金額が異なり最大20,864円/年。(※9)

アジア・オセアニア

日本はアジア・オセアニア地域において、 唯一各家庭からの受信料のみ(商業活動含む)で運営しています。

また、韓国は受信料+広告+政府補助金で運営しています。

しかし、アジアでは、 この2カ国を除いたほとんどの国々が、 各家庭から受信料を徴収していません。

国名 年間料金(円) 備考・特徴・参照
日本 15,120円 受信料収入は6,725億円/年。(※10)
韓国 3,000円 電気代として徴収。
(そのため、テレビ保持・利用とは無関係に支払う)
不足分は広告収入と政府による補助金で補填。(※11)
中国 0円 公共放送はないものの、メディアは国家が所有しており、ほとんど広告収入で運営。
一部政府援助があるもののごくわずか。(※12)
シンガポール 0円 政府による補助金で運営。(※13)
ベトナム 0円 広告収入と政府による補助金で運営。(広告収入>補助金)(※14)
インド 0円 世界最大規模の設備を持つ。だが視聴率は停滞しており10%未満。これは公共放送の内容が、 教育、健康、社会問題に特化しており、娯楽がないためとされる。関連広告収入と政府による補助金で運営(広告収入>補助金)。(※15)
オーストラリア 0円 政府による補助金と商業活動で運営(補助金>広告収入)。(※16)


北米・南米

アメリカは世界でも最も特殊で、 その財源は政府、州、地方などの補助金、大学・個人の寄付、商業活動などその財源は非常に多様です。

また、カナダは3割を広告、7割を政府からの補助金で賄っていますが、 政府予算が大幅に削減されたことを受け、 2015年ドイツのミュンヘン世界公共放送の会議において、 「公共放送は世界全体で予算削減に直面しており、公共放送が絶滅の危機にある」と主張するほど、 広告収入の落ち込みに危機感を持っています。

国名 年間料金(円) 備考・特徴・参照
アメリカ 0円 政府、州、地方などの補助金、大学・個人の寄付、商業活動などで運営(※17)
カナダ 0円 政府による補助金と広告収入で運営(※18)
ブラジル 0円
ブラジル国営放送のシェアはわずか2%で50%以上はTV Globo(民営)が占める。政府による補助金と広告収入で運営(※19)

アフリカ

アフリカは各家庭から受信料が徴収されるものの、 政府援助(広告有無は不明)があるため、比較的安くなっています。

国名 年間料金(円) 備考・特徴・参照
南アフリカ 2,120円 各家庭からも徴収されるが(規則不明)、ほとんどが広告収入と政府による補助金で運営。(※20)
ガーナ 828円 政府援助、広告収入の有無は不明。テレビを持っている人を対象に徴収。
テレビが2台以上だと、料金は1.6倍(※21)

公共放送の財源は主に3つ

上述の様に、世界各国の公共放送の財源は、以下の4つに分類されます。
世界の公共放送の財源
  • 各世帯からの受信料金
  • 広告
  • 政府の補助(税金)
  • 上記の組み合わせ

政府の補助金の場合、国民一人あたりの負担額は?

徴収料金だけを見ると、「0円」の国は羨ましいものの、 「政府の補助金(税金)で運営される」ということは、 税金を通じて、市民が支払っている(強制徴収されている)ことと何ら変わりません。

そのため、補助金額での運用は本当に安いのかを調べるため、 政府補助金の金額と、 その割合(政府補助金÷公共放送の全収入)、国民一人あたり負担額(政府補助金÷国人口)を計算しています。

国名 政府の補助金額(円) 補助金割合(%) 国民一人あたり負担額/年
スペイン 1,254億円 100% 2,693円
ロシア 585億円 100% 405円
アメリカ 617億円 19% 190円
カナダ 945億円 66% 2,575円
中国 282億円 10% 20円
シンガポール 145億円 31% 2,583円
ベトナム 不明
インド 540億円 100% 41円
オーストラリア 850億円 94% 3,454円
ブラジル 30億円 67% 14円


※税金は累進課税のため、高所得者ほど負担額が大きくなります。 また、税金は企業からも徴収されますが、これらは考慮せず、 国民負担額は補助金÷人口で計算しています。


NHKはやっぱり高い?

各家庭が公共放送に負担する金額を比較した結果、 NHKは、世界でも高い部類でした。 (受信料と上述の一人あたり負担額)

また、世界の全ての国は調べていないものの、 ここに記載している以外の国々も調べた結果、 ヨーロッパの一部の国々を除いて、 日本より公共放送の受信料が高い国はありませんでした。

順位 受信料(負担額)
1位 デンマーク 43,464円
2位 ドイツ 26,880円
3位 イギリス 21,823円
4位 フィンランド 20,864円
5位 フランス 17,792円
6位 日本 15,120円
7位 イタリア 11,520円
8位 チェコ共和国 8,019円
9位 ギリシャ 4,608円
10位 オーストラリア 3,454円
11位 韓国 3,000円
12位 スペイン 2,693円
13位 シンガポール 2,583円
14位 カナダ 2,575円
15位 南アフリカ 2,120円
16位 ガーナ 828円
17位 ロシア 405円
18位 アメリカ 190円
19位 インド 41円
20位 中国 20円
21位 ブラジル 14円
その他 ベトナム 不明


※「受信料(負担額)」は「個人から徴収される受信料」、または、「政府補助金÷その国の人口」を表示してます。
※フランス、ギリシャ、韓国、南アフリカは「個人から徴収される受信料」+「政府補助金」ですが、「個人から徴収される受信料」のみの金額を表示しています。



備考、参照:
※備考:
  • 調査対象とした国はなるべく日本で馴染みのある国を抽出したつもりですが、編集者個人の認識のため当サイトの閲覧者と異なることがあります。あらかじめご了承下さい。
  • 国営放送と公共放送の定義は異なりますが、当サイトでは「個人負担金額」に焦点を当てているため、明確に区別していません。
  • 表記に「license」と「licence」が混在しますが、国・言語・風習の違いによるもので、間違いではありません。
※参照
※1:デンマーク
  • DR(デンマーク放送協会)公式「media license(2018)」
  • メディアライセンス料は、デンマーク放送公社(DR)によって収集されます。
※2:フランス
  • Service-Public.fr(フランス政府公式公共サービスサイト)「Contribution a l'audiovisuel public (redevance tele)」(2018)
※3:ドイツ
  • ARD、ZDF、Deutschlandradio 英語版「2018年 THE LICENSE FEE (RUNDFUNKBEITRAG) FOR CITIZENS」
※4:ギリシャ
  • Hellenic Broadcasting Corporation(EPTギリシャ国営放送)wiki
  • Public Power Corporation(ギリシャ公共電力公社)公式「ERT (Greek Radio and Television) fee (Law 4324/29.04.15)」
※5:イタリア
  • Rai(Radiotelevisione Italiana Spa)公式「Canone Tv Ordinario(通常のテレビ料金)」
※6:イギリス
  • BBC公式「BBC TV Licensing 2018」
※7:スペイン
  • rtve(Corporacion de Radio y Television Espanola, S.A.)公式「Notas de prensa Corporacion(プレスリリース)」「Reunion del Consejo de Administracion de RTVE de 28 de febrero de 2018」
※8:ロシア
  • VGTRK(All-Russia State Television and Radio Broadcasting Company)wiki
※9:チェコ共和国
  • Czech Television in 2009「TELEVISION CONTEXT OF CZECH REPUBLIC」
※9:フィンランド
  • VERO SKATT「Public Broadcasting Tax(公共放送税)」
※10:日本
  • NHK公式「NHK放送受信契約・放送受信料についてのご案内」(2018) 地上契約 月額より
※11:韓国
  • KBS公式「About TV License Fee」
※12:中国
  • ina globalニュース「CCTV, 1.2 billion viewers strong」
  • GLOBAL TIMESニュース「CCTV 2014 advertising revenue exceeds last year's」
※13:シンガポール
  • IMDA(Info-communications Media Development Authority)(シンガポール情報通信省)「Radio and Television licence abolished」
※14:ベトナム
  • VTV(Vietnam Television) wiki
※15:インド
  • NEWS CLICK「Is Doordarshan on the Brink of Getting Extinct?」
  • Prasar Bharati(インドの公共放送局)
※16:オーストラリア
  • ABC(Australian Broadcasting Corporation)公式:「Entity resources and planned performance」
※17:アメリカ
  • CPB(Corporation for Public Broadcasting )公式「Public Broadcasting Revenue Fiscal Year 2013」
※18:カナダ
  • CBC(Canadian Broadcasting Corporation)公式「CBC Radio-Canada Annual report 2016-2017」
  • HUFFPOSTニュース「CBC President Hubert Lacroix: Public Broadcasters ‘Risk Being Boiled To Death'」
※19:ブラジル
  • Fundacao Padre Anchieta公式「FINANCAS(2016)」
※20:南アフリカ
  • SABC(South African Broadcasting Corporation)公式「TV Licences」、「ANNUAL FINANCIAL STATEMENTS(2016)」
※21:ガーナ
  • Ghana Broadcasting Corporation(GBC)公式「Payment Of TV Licence To Ghana Broadcasting Corporation (GBC)」(2018)
※換算レートは2018年の以下のレートを適用しています。
  • デンマーク: 1デンマーク・クローネ17.2円
  • イギリス: 1ポンド 145円
  • ロシア: 1ロシア・ルーブル1.716円
  • チェコ共和国: 1チェコ・コルナ4.95円
  • その他ヨーロッパ: 1ユーロ 128円
  • 韓国: 1ウォン0.1円
  • 中国: 1人民元16円
  • シンガポール: 1シンガポールドル82円
  • インド:1インド・ルピー 1.57円
  • オーストラリア: 1オーストラリアドル82円
  • アメリカ: 1ドル113円
  • カナダ: 1カナダドル86円
  • ブラジル: 1レアル30.12 円
  • 南アフリカ: 1ランド8円
  • ガーナ: 1セディ23.4円
※各国の人口はgoogleの国名+人口で検索した結果(2018年)を利用しています。